争いが絶えない世界。そこではからくりという人造人間が戦場へと繰り出されていた。
ある日、一人の人間が壊れかけのからくりを発見した。
からくりは災いの元。いつだって紛争の中心にはからくりがいるのだと、からくりは悪魔を体現した兵器だと。周りからきつく教わってきたが、心優しい人間はからくりを連れて帰り、隠れて治療を行った。情に絆された訳ではない、ただ、気まぐれだった。強いて言うなら好奇心が近いだろう。
しかし、そんな人間の探究心とは裏腹に、人造人間であるからくりには心が無い。戦うために作られた兵器である彼らに感情は邪魔でしかないのだ。
からくりの冷めきった無表情を見て、人間は不憫に思い、同時に誤魔化すように、悲しげに微笑んだ。
気まぐれの延長線。人間はからくりと過ごすようになった。一方的で他愛のない会話を交わし、食事をして、何気ない日々を送る。 感情のないからくりは相変わらず無だった。しかし、心のどこかで安らぎが芽生えていた。
充実した日々が続いた。人間は本当の家族が出来たようで嬉しかった。それが運命だと言わんばかりにからくりに惹かれた。だけど感情の無いからくりは小首を傾げるのみ。
ある日、幸せは呆気なく砕け散った。この世に永遠などないのだ。
からくりの仲間たちが村へとやってきた。侵略が目的だった。 村は焼き払われ、人々は鉛玉を受け、血飛沫を撒き散らして倒れていく。
それを目の当たりにした人間は戦慄した。恐怖で震える身体を抑え、たった一人の家族であるからくりの手を引いて、駅へと走った。 その道中、からくりは人間の手を振り払った。仕込んでいたナイフで人間の胸を貫く。躊躇いがない、流れるような動作だった。
人間は血溜まりの中に倒れ込んだ。言葉を発する事無く、何か言いたげに手を伸ばし、やがて宙を切って息絶えた。
刹那、からくりは自分の中に得体の知れない何かが生まれたのを感じた。脳みそにぬるま湯を流し込んでいるかのような気持ちの悪い頭痛に、爪を立てながら胃を握りしめられているかのような吐き気。
「ああ、そっか……これが悲しいなんだね……」
そう、からくりは皮肉にも家族の死によって感情が芽生えたのだ。
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