水平線の彼方へ続く未知。
真っ暗な路地裏の向こうから訪れるのは見知った香り。
ああ、今日は天気だったなぁ……
「あれ?」
窓には空耳。架空の空に、空っぽの空き缶。
そっと一瞥。歩き出すのは誰だったか。記憶にあるのは彼女か、それとも走り出すのは自分から。
黄昏た部屋に、壊れたからくりが孤立している。まるで美術品のような、神秘性を孕んでいるそれを、ガラスを扱うように、優しい手つきで触れた。
「あれれ?」
革命前夜。広がった星空の下で、私たちは巡り合った。奇跡的な出会いに、果たしてどんなカルマがあったのか。
「聞こ……ま……か?」
虹の彼方へ流れる鴉。祝福の鐘が鳴る時、警鐘の合図でもある。
「私の声が聞こえますね?」
この手を離すもんか。
絶対に。例え、この身が朽ち果てようとも、私は貴女と。
「思えばあの時から。私は間違っていたのか、それとも晦冥か……」
思えばあの時から。狂っていたのは私だった。執着していたのは現実だ。
それでも……
「それでも?」
冷たい風を帯びて沈む夕陽。
隣に座っていた貴女を、私は受け入れた。
ひっそりとした車内で、左利きの言葉。歯の浮くような台詞。その目に灯す。
真っ暗な駅の終点にはナニがある?
「私は私? 貴女は貴女? だよ?」
「戻れない」
七面鳥を囲んだパーティ。鼻腔を擽るのは焦げた匂い。
円卓を囲んだ機械。ネジを巻いて動く仕組みだなんて思わない。私にとっては家族同然だ。
「乾いた絵画には何が描かれているのか」
「もうすぐ会えるから、私は目を閉じる。きっとそこには望んだ未来が在る」
「変わらない日常」
「変わらない光景」
「変わらない人々」
「変わったのは――」
死とは偽りである。それゆえに望むが、自己満足でしかない。
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